さしきず・いぶつ

刺し傷・異物

刺し傷・異物の原因には,どんなものがあるの?

 刺し傷とは鋭いものが刺さってできるキズです。原因には先の尖った包丁、ナイフ、針、釘、アイスピック、箸、鉛筆、木の枝、竹などの鋭いものが刺さってできるキズです。傷口は小さいですが、キズが深いことが特徴です。キズができた時に、刺さったものの一部が折れると異物として体の中に残ります。また、土や砂などで汚染されたものや、さびた金属が刺さった時には、土砂やさびが体の中に残って異物となります。

刺し傷・異物ではどんな症状が出るの?

 刺し傷は浅い場合には大きな問題が出ることは少ないのですが、キズの場所によって症状は異なります。手・足にキズができた時に、筋肉や腱(すじ)が切れると、手・足や指・足趾の動きが悪くなることがあります。また、神経が切れるとその先の知覚が鈍くなったり、動きが悪くなります。太い血管が切れると大量に出血することもあります。胸部では肺にキズが達すると呼吸困難となり、腹部では内臓にキズが達すると腹膜炎や腹腔内出血となり、緊急手術が必要となります。

 鉛筆が皮膚に刺さって、折れると芯が残ってホクロのような黒い斑点が残ります。木の枝や竹なども折れやすいので異物として残りやすいものです。異物を放置すると感染を起こして、赤くはれて、膿が出てくることがあります。土で汚れたものやさびた金属が刺さった場合も感染を起こしやすいので注意してください。

刺し傷の応急処置はどうするの?

 浅い刺し傷では刺さったものを抜いて、傷口を水道水で洗うだけで問題がありません。傷口からキズの中に水を無理に入れると、感染がひどくなることがあるので、傷口だけを洗ってください。

 深い刺し傷では、刺さったものは自分で抜かずに直ちに形成外科を受診してください。血管を傷つけていても、刺さったもので圧迫されていると、刺さったものを抜いた時に多量に出血することがあります。刺さったものが抜けたとしても、深いと思った場合は、できるだけ早急に形成外科を受診することをお勧めします。

刺し傷・異物の検査はどうするの?

 神経が損傷しているかどうかの検査では、運動や知覚の検査を行います。知覚検査は細いフィラメントを用いて触っているのかがわかるかどうかを検査します。金属の異物(針、包丁、ナイフなど)が刺さった場合にはレントゲン検査で異物が残っているかが分かります。木や竹などの場合には、レントゲンでは分からないことが多いので、超音波検査、CT検査、MRI検査などが行われますが、小さいものでは見つからないこともあります。一つの検査では発見できない時でも複数の検査を組み合わせることで発見ができることもあります。

刺し傷の治療はどうするの?

 刺し傷では細菌感染がおこりやすいので、基本的には縫合は行わず軟膏などで治療を行います。

 浅い刺し傷では通院は不要なことが多いですが、数日して赤くなってきた場合には、感染がおこっている可能性が高いので形成外科を受診してください。抗生剤の内服や軟膏処置を行うことがあります。膿が出てきた場合には、切開が必要なこともあります。

 深い刺し傷の場合は、刺さったものが土などで汚染されていると破傷風を起こすことがありますので、破傷風トキソイドの注射が必要です。また、その後も感染に対して抗生物質の点滴や内服を行います。

 筋肉、腱や神経が切れている場合は縫合を行います。刺し傷ではキズが小さいために、傷口からでは正確な縫合ができないこともあり、傷口を大きく切り開くこともあります。ただし、感染が起こっている時には、先に感染の治療を行い、感染が治まってから縫合を行います。

異物の治療はどうするの?

 異物が残っている場合は、できるだけ早期に異物を探して取り除きます。小さい傷口からは異物が見つからない時には、傷口を大きく切開します。金属の異物はレントゲンを見ながら取り除くことができますが、木や竹などの場合はレントゲンでは写らないので、完全に取り除くことができないことがあります。特に、神経・血管や重要な臓器の近くでは、あまり大きく切れないこともあり、取り残しが生じることがあります。異物が残って感染が起こると、抗生剤だけでは治療が難しく、再手術が必要となることもあります。

文責:
熊本赤十字病院形成外科
 部長 黒川 正人

熊本赤十字病院 形成外科 部長 黒川 正人

2020年2月1日掲載