どうぶつこうしょう

動物咬傷(ペット咬傷)

はじめに

 近年、イヌやネコをペットとして飼う人が増えています。それにともなって、ペットに咬まれてキズができたのに「大丈夫だろう」といったんは様子を見てしまい、キズが悪化してから病院を受診する患者さんも増えています。
 ここでは、動物咬傷、とくにイヌやネコに咬まれることで起こるペット咬傷の症状と治療について解説します。

動物咬傷(ペット咬傷)ってどんなキズですか?

 動物に咬まれることで起こるキズです。咬まれたことで動物が口の中に持っていた細菌が体内に入ってきます。イヌに咬まれた場合、4~20%で感染が起こると言われていますが、ネコに咬まれた場合、さらに高く、60~80%という高確率で感染が起こりますので注意が必要です。ネコの場合、細く鋭い牙が深く突き刺さるためと考えられています。感染が起こった細菌によって症状は異なりますが、咬まれた部位が腫れて痛くなることが多いです。イヌの場合、犬種にも左右されますが、咬む力が強いため、損傷が大きくなり、顔や手の皮膚や組織が咬み切られる場合があります。

咬まれてキズができたら、どうすればいいですか?

 咬まれた部位をよく洗浄することが重要です。応急処置として水道水でキズをよく洗い流して、できるだけ速やかに形成外科を受診してください。出血が多い場合は、強く押さえて、すぐに形成外科か、救急対応をしている病院を受診してください。
 国内でイヌに咬まれた場合は狂犬病を心配する必要はありませんが、海外で咬まれた場合は、イヌに限らず注意が必要で、すぐに医療機関や保健所に相談してください。

どんな治療をしますか?

 イヌ、ネコいずれの場合も、抗菌薬を用いて治療します。場合によっては破傷風の予防のために注射を打つことがあります。
 キズの治療ですが、まず流水でしっかりとキズの中まで洗浄します。細菌が繁殖しなければ、たいていのキズはきちんと治ります。傷口が開いていたら糸で縫合しますし、キズ痕は残りますが、傷が治らないということはありません。しかし、細菌が繁殖して感染が生じると、傷口は時間が経つにつれて悪化して膿(うみ)が貯まってしまうため、傷口を切開して拡げて膿を出す治療を行います。感染がひどくなり、皮膚や組織が腐ってしまった(壊死)場合、壊死した部分を切除する治療が必要となってしまいます。
 顔や手など、大きな欠損や目立つ欠損となってしまった場合、感染が落ち着いた後、形成外科で欠損を治す治療(再建手術)を行います。

さいごに

 ペットの飼いイヌや飼いネコが人を咬む状況はさまざまですが、決してただ人を傷つけようと咬んでいるわけではありません。必ず何かしらの原因があります。咬まれてしまった場合、まずは落ち着いて対処してください。私たち創傷外科医がしっかりと治療します。
 そして、咬まれた後もワンちゃんやネコちゃんにたくさんの愛情を注いてあげてください。

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  1. 飼い犬に咬まれて受傷されました。
  2. 咬まれてちぎれかかった鼻の組織をいったんは縫合しましたが、血流が悪くなり、壊死を起こしました。
  3. 欠損に対して、形成外科で再建手術を行いました。

文責:
福島県立医科大学
形成外科学講座
 講師 藤田 宗純

福島県立医科大学 形成外科学講座 講師 藤田 宗純

2022年4月19日掲載