日本創傷外科学会 理事長 島田 賢一
(金沢医科大学形成外科学 教授)
この度、本学会の9代目理事長を拝命いたしました、金沢医科大学医学部形成外科学講座の島田賢一です。一般の皆様と会員ならびに医療従事者のみなさまへご挨拶を申し上げます。
一般の皆様へ
日本創傷外科学会は形成外科医が中心となり、キズの外科的治療やキズアトを綺麗にする治療に関して研究や情報交換をしています。
現在キズ・キズあとの治療は湿らせて治癒させる湿潤治療が勧められています。昔は乾かして,かさぶたを作りそのかさぶたの下でキズを治癒させていました。現在のキズを専用絆創膏で閉鎖して治療する湿潤治療では,治療経過中一見するとキズから膿がでてきたと勘違いすることがあります。しかしこの湿潤治療の方がより早く,痛み無く,綺麗に治癒させることができます。このように長く常識とされていた治療法がさまざまな研究と知見の積み重ねにより,これまでとは全く反対となることがあります。
創傷外科学会ではキズ・キズあとに関して基礎的な研究や最新の臨床経験からの知識を,広く社会に周知し還元していくことが重要な使命です。また,近年の高齢化社会への進行にともない,糖尿病の患者さんや透析患者さんの足などに生じる創傷(キズ)も増加してきました。慢性難治性潰瘍といわれるこれらの創傷(キズ)に対しても創傷外科学会では積極的に新しい治療に取りくんでいきます。
日本創傷外科学会は、全身の創傷に対する最新の医療について一般の皆様に情報発信を行っております。学会のマスコットキャラクター「なおるん」を先頭にして、『キッズの日はキズケアの日(5月5日)』が記念日として日本記念日協会に登録されています。一般のみなさまへの「キズ・キズあと ガイドブック」も刊行されています。ぜひ参考にしてくだい。
会員ならびに医療従事者のみなさまへ
創傷外科学会は形成外科が「創傷」を扱う第一の診療科としてのプレゼンスを示すべく,2008年に野﨑幹弘先生(東京女子医大形成外科教授:当時)を理事長として設立されました。2009年1月に波利井清紀先生(杏林大学形成外科教授:当時)のもとで第1回設立総会が東京で開催されました。設立当初は500人足らずの会員が16年を経た現在は1700人にまで成長しました。その間2009年に法人化,学会誌「創傷」の創刊,専門医制度の制定と認定,学術研究助成制度創設,創傷に関連するさまざまなガイドラインの発出,そして2020年には形成外科領域では初めての英文誌(International
Journal ofSurgical Wound Care IJSWC)が発刊されました。このように日本創傷外科学会は順調に発展してきています。
2024年1月1日に能登半島地震が発災しました。今回のこの災害においては急性創傷,慢性創傷に関して形成外科医としてどのように取り組むべきか深く考えさせられました。創傷外科学会では災害時における創傷治療に関して,日本形成外科学会と連携して取り組みたいと考えます。また,前理事会から引き続き,慢性創傷に関する在宅医療分野に関して具体的な方策を提案していきたいと思います。
本学会の発展に、みなさまのご指導とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
日本形成外科学会・日本創傷外科学会
公式キャラクター キズを治す妖精「なおるん」
「日本創傷外科学会」創立にあたって
(初代理事長 野﨑 幹弘)