てのけが

手のケガ

カッターやガラスなどで手を切ってしまった場合

 手は血流が良いため、たくさん血が出ることがあります。動脈性の出血を長時間放置したりしない限り、体内の血液量が不足することはありませんので、慌てずに行動して下さい。
 まず、水道水で傷口を洗って下さい。特に汚染された傷に対しては、大量の流水で洗浄することが重要です。消毒薬は、細菌数を減らす効果が流水に劣るうえ、組織傷害性がありますので、使用する必要はありません。
 次に傷口をなるべく清潔な布などで押さえて下さい。大抵の出血は、数分間圧迫することで止まります。1~2分で圧迫を解除して傷口を見てしまうと、また振り出しに戻ってしまうことがあるため、数分間持続して圧迫することが重要です。
 止血目的で指や腕の根本を縛ることは止めて下さい。静脈のみが圧迫されることにより組織が鬱血してしまうことがありますし、縛ることにより神経が痺れてしまうと神経損傷の有無が判定できなくなってしまいます。
 ある程度の深さの傷だと、麻酔をして縫合する必要があります。縫合の効果は、傷口からの感染を防ぐこと、再出血を防ぐこと、痛みを減らすことなどです。可能なら前述の洗浄・圧迫を行った後に病院にいらして下さい。
 切れたところより末梢(先端側)の感覚がない、もしくは鈍い場合、神経損傷の可能性があります。また、切れたところより末梢の関節が動かない場合、腱断裂の可能性があります。いずれも手術が必要となる可能性がありますので、速やかに専門医を受診して下さい。

包丁や皮剥き器で指先を削いでしまった場合

 洗浄・圧迫止血をするところまでは、切り傷と同じですが、血が止まりにくいことが多いです。アルギン酸含有の創傷被覆材を使用したり、削いだ皮膚を縫い戻したりすることにより止血が可能です。切り傷と同様に、洗浄・圧迫をしたうえで病院を受診して下さい。

爪が剥がれてしまった場合

 一度剥がれてしまった爪が元通りに付くことはありませんので、軟膏を塗布して治癒させます。爪が元の長さまで生えてくるには3~6ヶ月かかります。切り傷を伴う場合や末節骨(爪の下の骨)の骨折を伴う場合は、添え木の代わりに爪を元の位置に戻して縫合固定することがあります。

突き指をして指が変形してしまった場合

 骨折、脱臼の可能性があります。レントゲンを撮影した上で、治療方針を決める必要がありますので、自分で整復しようとせず速やかに専門医を受診して下さい。

切断してしまった場合

 電気ノコギリや工業用機械で指を切断してしまった場合、顕微鏡下に血管・神経を吻合することにより再接着することが可能です。(組織の損傷の程度が強い場合は難しいこともあります。)切断された組織は、乾燥したり温まったりしてしまうと再接着できる可能性が低くなりますので、湿った(濡らしすぎない)ガーゼでくるんでビニール袋に入れて口を縛り、さらにそのビニール袋を氷水が入ったビニール袋にいれたうえで、病院にお持ち下さい。直接氷水の中に入れたり、保冷剤などで冷やしすぎたりしないように注意して下さい。(水道水は細胞より浸透圧が低いため、直接水の中に入れると組織が痛みます。)また、再接着が可能な病院は限られるうえ、時間経過とともに再接着できる可能性が減っていきますので、救急車を呼んで下さい。

文責:
自治医科大学
とちぎ子ども医療センター
 小児形成外科
 講師 須永 中

自治医科大学とちぎ子ども医療センター 小児形成外科 講師 須永 中

2022年6月21日掲載