日本創傷外科学会 初代理事長 野﨑 幹弘
(東京女子医科大学 形成外科教授)
形成外科医が所属する (社)日本形成外科学会は、日本専門医制評価・認定機構において「基本領域の診療科」のひとつに位置付けられています。基本領域の診療科とは、患者さんが発病して最初に診てもらう疾患を扱う領域のことです。また医師国家試験は年に一回施行されています。このため多岐にわたる分野から専門家が集まり毎年試験問題が作られますが、形成外科医もこの作業に加わり、主に創傷(キズ)を治す分野の出題を担当しております。
いわゆる外傷(怪我)は、日常最も頻度の多い疾患ですが、それゆえに怪我によるキズや傷跡を早く、きれいに治すことは社会的ニーズです。病気に対する早期診断・早期治療の言葉が社会に浸透し予防医学に国民の目が向けられている現在、外傷についても同様の姿勢が求められることは、当然のことといえるでしょう。そこでこの度形成外科医の有志により『日本創傷外科学会』(キズと傷跡を治す外科)を設立することになりました。
創傷外科、創傷治療の分野には、すでに、日本形成外科学会、日本創傷治癒学会、日本褥瘡学会、日本熱傷学会などの学会が存在しておりますが、複雑かつ多岐にわたる「創傷」全体を臨床的にとらえて、集学的に討論する機会は多くありません。
日本創傷外科学会は創傷治療の基本は勿論、熱傷・外傷などの急性創傷や褥瘡(床ずれ)・下腿潰瘍などの慢性創傷、ケロイドや肥厚性瘢痕などを対象に、より高度な学術を研鑽する場です。ここにおいて積み重ねられていく研究の成果は、わかりやすく国民にも周知され、創傷治療の啓蒙と予防医学に繋がることの未来を確信致します。また臨床実地医家向けにも創傷治療に関する診療ガイドラインを発信できるよう努力していく所存です。
2008年6月を以ってキズと傷跡を治す外科『日本創傷外科学会』はキックオフしました。皆様方のご指導ご支援を賜わりたく、何卒宜しくお願い申し上げます。