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一般社団法人 日本創傷外科学会
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第Ⅰ編 急性創傷診療ガイドライン
・1章 切創,裂創,擦過創,刺創,異物(汚染のない創)
・2章 挫滅創・汚染創
・3章 皮膚欠損創,剥脱創
・4章 切断創
・5章 動物咬傷
第Ⅱ編 感染創診療ガイドライン
・1章 感染創の基本事項
・2章 蜂窩織炎
・3章 壊死性軟部組織感染症
・4章 骨髄炎
・5章 Toxic Shock Syndrome(TSS)
・6章 陥入爪・巻き爪
第Ⅲ編 ケロイド・肥厚性瘢痕診療ガイドライン
・1章 ケロイド
・2章 肥厚性瘢痕
・3章 瘢痕拘縮
・4章 醜状瘢痕
第Ⅳ編 慢性創傷診療ガイドライン
・1章 胸骨骨髄炎・縦隔炎
・2章 静脈うっ滞性潰瘍
・3章 糖尿病性潰瘍
・4章 虚血性潰瘍
・5章 膠原病性潰瘍
・6章 慢性放射線潰瘍
ガイドライン
第Ⅰ編 急性創傷診療ガイドライン
第Ⅱ編 感染創診療ガイドライン
第Ⅲ編 ケロイド・肥厚性瘢痕診療ガイドライン
第Ⅳ編 慢性創傷診療ガイドライン
第Ⅰ編 急性創傷診療ガイドライン
1章 切創,裂創,擦過創,刺創,異物(汚染のない創)
CQ1
刺創にCT,MRI,超音波検査は有用か?
推奨
異物残存が疑われる場合や深部臓器損傷の評価に,CT・MRI・超音波検査は有用である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ2
切創,裂創,擦過創,刺創において消毒剤による洗浄は水道水による洗浄より有用か?
推奨
創傷部の感染予防には水道水による洗浄が有効であり,消毒薬や生理食塩水を洗浄に用いることは必ずしも必要ではない。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ3
切創,裂創,擦過創において,創傷被覆材は皮膚外用剤よりも有用か?
推奨
創部の状態に応じて適切に選択すれば,皮膚外用剤と創傷被覆材のどちらも有用である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ4
切創,裂創,刺創に予防的抗生物質投与は有効か?
推奨
基礎疾患を伴わない骨や深部組織などの損傷がない単純な創傷では,予防的抗生物質投与によって感染の発生率には差を認めず,有効とはいえない。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ5
切創,裂創,擦過創,刺創に破傷風予防は有効か?
推奨
切創,裂創,擦過創,刺創に対して,年齢,創の状態,ワクチン接種歴,糖尿病合併の有無などを考慮し破傷風予防を行うことは有効である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ6
切創,裂創では受傷から縫合までの時間が術後創部感染に影響するか?
推奨
単純な切創,裂傷であれば,縫合までの時間は術後感染に影響していないと考えられる。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ7
切創,裂創における合成皮膚表面接着剤は縫合,皮膚接合用テープより有効か?
推奨
縫合や皮膚接合用テープなどの従来法と比較すると,合成皮膚表面接着剤(TA)は処置に要する時間や痛みの軽減には有用であるが,創部離開のリスクを考慮すべきである。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
2章 挫滅創・汚染創
CQ8
評価に創部細菌培養は有用か?
推奨
評価に創部細菌培養は考慮してもよい。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ9
水道水による洗浄は有効か?
推奨
水道水による洗浄は有効である。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ10
局所抗生剤投与は有効か?
推奨
局所抗生剤投与はそれのみでは有効でない。
推奨の強さと根拠
2D(弱い推奨,とても弱い根拠)
CQ11
デブリードマンは有効か?
推奨
明らかな壊死組織や異物については,デブリードマンが望ましい。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ12
一期的縫合は有効か?
推奨
受傷後6~8時間以内に十分な洗浄・デブリードマンが行われた場合には,一期的縫合が有効である。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
3章 皮膚欠損創,剥脱創
CQ13
皮膚欠損創,剥脱創にX線,超音波,CT,MRI検査は有用か?
推奨
真皮までの浅い欠損創では画像検査は不要であるが,受傷機転から異物などの可能性があればX線,超音波,CT,MRIなどを提案する。ただし,金属片が疑われる場合は,MRI検査を実施できない場合があるので注意を要する。また,骨折や臓器損傷など深部損傷を疑えば,各種画像診断が必要である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ14
皮膚欠損創,剥脱創に陰圧閉鎖療法(NPWT)は有効か?
推奨
治癒に時間を要する大きな皮膚欠損創や深部欠損創に提案される。術前に良好な母床の形成を促進するために有効である。一部で骨や腱などが露出した深部損傷や,広範な皮膚欠損を伴う症例に提案される。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ15
皮膚欠損創,剥脱創に皮膚外用剤と創傷被覆材のどちらが有効か?
推奨
創部の状態に応じて適切に使用すれば,皮膚欠損創,剥脱創に皮膚外用剤と創傷被覆材のどちらを考慮してもよい。(2D)
皮膚外用剤の使用による保存的治癒を行う場合,比較的早期(2~3週間以内)に創治癒が得られる場合には考慮してもよい(2C)が,治癒に長期間(3週間以上)を要する場合には手術療法を考慮すべきである。
創傷被覆材の使用は,皮膚欠損創の湿潤環境を維持し創傷治癒に効果があり提案されるが(2C),浸出液が多い場合や,感染が危惧される場合には,慎重な適応が望ましい。
推奨の強さと根拠
2D(弱い推奨,とても弱い根拠),2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ16
皮膚欠損創,剝脱創に多血小板血漿(PRP)療法は有効か?
推奨
治癒に時間を要し瘢痕拘縮を来す可能性の高い皮膚欠損創に提案される
*
。
*
:一部保険適用外
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ17
皮膚欠損創,剥脱創には人工真皮と植皮術,皮弁術などの外科的手技は有効か?
推奨
皮膚欠損創,剥脱創に人工真皮の使用や植皮術,皮弁術は推奨される。深く,大きな創部で,汚染のない新鮮創の場合は,一期的に植皮術を行うか,人工真皮を貼付後に肉芽増生をはかり,二期的に植皮を行うかを検討する。また,顔面などの露出部や,骨・関節など深部組織の露出を伴う創部では,皮弁術による修復を検討する。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ18
皮膚欠損創,剥脱創に対する植皮片の固定に陰圧閉鎖療法(NPWT)は有効か?
推奨
皮膚欠損創,剥脱創に対する植皮片の固定にNPWT
*
は推奨される。
四肢関節可動部周囲や臀部・外陰部など植皮片の固定に難渋する部位,浸出液の多い創面において特に有効である。
*
:保険適用外
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ19
剥脱創に対し剥脱した皮弁を利用した植皮は有効か?
推奨
剥脱した皮弁を縫合しない場合に,剥脱した皮弁の皮膚を利用した皮膚移植を考慮してよい。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
4章 切断創
CQ20
切断指にX線写真は有効か?
推奨
切断指の治療前診断にはX線撮影が推奨される。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ21
切断指に細菌培養は有効か?
推奨
切断指に細菌培養を考慮してもよい。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ22
切断指に神経学的検査は有効か?
推奨
切断指に対して神経学的検査を考慮してもよい。
推奨の強さと根拠
2D(弱い推奨,とても弱い根拠)
CQ23
洗浄は有効か?
推奨
洗浄は有効である。
推奨の強さと根拠
1C(強い推奨,弱い根拠)
CQ24
保存的治療において消毒は有効か?
推奨
保存的治療において消毒の使用を考慮してもよい。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ25
保存的治療において抗生剤は有効か?
推奨
保存的治療において,抗生剤の全身投与を考慮してよい。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ26
保存的治療において外用剤(軟膏,創傷被覆材)の使用は有効か?
推奨
保存的治療において,外用剤(軟膏,創傷被覆材)の使用を考慮してよい。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ27
保存的治療において禁煙指導は有効か?
推奨
保存的治療において,禁煙指導は有効である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ28
切断創に断端形成術は有効か?
推奨
断端形成は,社会復帰が短いため治癒時間の短縮には有効である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ29
切断創に皮弁は有効か?
推奨
皮弁選択は,大きさや部位に応じて再建手順,再建材料をふまえれば有効である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ30
切断創に皮膚移植は有効か?
推奨
切断創に皮膚移植を考慮してもよい。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ31
切断創に人工真皮は有効か?
推奨
切断創に人工真皮を考慮してもよい。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ32
切断創のコンポジットグラフトは有効か?
推奨
コンポジットグラフトは,小さなものが生着するので有効である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ33
切断指に陰圧閉鎖療法(NPWT)は有効か?
推奨
切断指にNPWTを考慮してもよい。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ34
切断指に対して断端形成を行う場合,断端の神経処理は有効か?
推奨
切断指に対して断端形成を行う場合,断端の神経処理は神経腫の予防処置として有効である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
5章 動物咬傷
CQ35
傷の部位と深さは重症度に関連するか?
推奨
傷の部位と深さは重症度と関連し,救急対応の必要性,画像検査の必要性,感染のリスク判断,治療方針に影響する。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ36
感染は重症度に関連するか?
推奨
動物咬傷の重症度は,受傷原因,患者の基礎疾患や年齢などに左右され,感染による咬傷の重症度は起炎菌,受傷部位より異なることが予想される。
しかし,感染を生じた咬傷は治療期間が長くなるとする報告もあり,感染は重症度に関連する可能性があることは十分に考えられる。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ37
小児の犬咬傷は成人と比べて重症になりやすいか?
推奨
小児の犬咬傷は成人と比べて体表面積当たりの受傷面積が広くなりやすい傾向にある。さらに,経験,教育が未熟なため,防衛することがなく,小児の犬咬傷は成人と比べて重症損傷を受けやすい可能性がある。以上から,小児の犬咬傷は成人と比べて重症である可能性がある。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ38
画像検査は有用か?
推奨
骨折,異物,頭蓋内損傷,顔面骨骨折,血管損傷,軟部組織損傷,胸部損傷,脊髄損傷などが疑われる咬傷に単純X線検査やCTが有用である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ39
血液生化学検査は有用か?
推奨
創治癒に影響する基礎疾患を検索するために,また,受傷の原因によっては血小板減少,横紋筋融解などの特異的な症状を来すこともあり,考慮してもよい。臨床所見や既往症から菌血症の疑いがある場合は,重篤な転機を早期に発見するため,有用である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ40
細菌培養は有用か?
推奨
臨床的に感染を認めない創の創培養は不要である。臨床的に感染を認める創の創培養は考慮してよい。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ41
人咬傷のとき,HBV,HCV,HIV抗原抗体検査は有用か?
推奨
人咬傷のときHBV,HCV,HIV抗原抗体検査は,曝露後感染予防を行うかどうかの判断や,感染した場合の治療のためにも考慮してよい。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ42
破傷風予防接種は有効か?
推奨
動物咬傷後,予防接種歴あるいは創の汚染状態などに応じて破傷風予防接種を実施することは有効である。
推奨の強さと根拠
2D(弱い推奨,とても弱い根拠)
CQ43
狂犬病曝露後予防接種は必要か?
推奨
日本国内では必要性は極めて低い。輸入され,狂犬病予防接種が未接種の動物に咬まれたときは狂犬病予防接種の必要性がある。
国外で曝露を受けた場合,帰国後予防接種は必要である。あるいは,曝露を受けて国外ですでに予防接種を開始されている場合は,追加免疫の必要性がある。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ44
抗生物質の予防投与は有効か?
推奨
予防投与を考慮してもよい。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ45
創部洗浄は有効か?
推奨
哺乳動物の口腔内常在菌は非常に種類が多いため,汚染創を清浄化する手段として創部洗浄は有効である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ46
創部消毒は有効か?
推奨
動物咬傷で創部消毒が細菌感染率を低下させるというエビデンスはない。また,消毒薬あるいは殺菌薬による組織障害が懸念されるため,推奨されない。ただし,狂犬病感染が危惧される場合は使用してもよい。受傷早期に洗浄することが基本である。
推奨の強さと根拠
2D(弱い推奨,とても弱い根拠)
CQ47
創部デブリードマンは有効か?
推奨
創部デブリードマンを考慮してもよい。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ48
一次縫合は有効か?
推奨
一次縫合を考慮してもよいが,手や刺創,易感染性の基礎疾患がある場合,一次縫合の適応は慎重に選ぶ必要がある。顔面は受傷後24時間以内であれば積極的に縫合を考慮してもよい。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ49
ドレーン挿入は有効か?
推奨
ドレーン挿入は有効である。基本的に十分なドレナージ環境を作る必要がある。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ50
皮弁・植皮による即時再建は有効か?
推奨
咬傷の創面を新鮮化でき,重要臓器が露出している場合には考慮してもよい。
推奨の強さと根拠
2D(弱い推奨,とても弱い根拠)
CQ51
剥脱組織のcomposite graftは有効か?
推奨
剥脱組織のcomposite graftは再建が容易ではない部分(鼻,耳介,眼瞼など)では試みることは有効である。
推奨の強さと根拠
2D(弱い推奨,とても弱い根拠)
CQ52
血管吻合を用いた再接着は有効か?
推奨
血管吻合用いた再接着は,施設により考慮してもよい。
再建困難な部位などでの再接着は成功した場合の恩恵は大きい。しかしながら,条件が極めて悪いことがほとんどであり,極めて難しい。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ53
ヒアリ刺傷が疑われる場合,早期の医療機関受診は有効か?
推奨
ヒアリ刺傷はアナフィラキシーショックを来すリスクがあり,また,局所反応にとどまった場合でも,激痛,紅斑,蕁麻疹,膿疱などの激しい症状を引き起こす。ヒアリ刺傷が疑われる場合,早期の医療機関受診が推奨される。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ54
ダニ咬傷が疑われる場合,早期の医療機関受診は有効か?
推奨
ダニ咬傷が疑われる場合,早期の医療機関受診を行い創状態の評価,専門医の診察を受けることが望ましい。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ55
蜂刺傷にステロイド塗布は有効か?
推奨
蜂刺傷にステロイド塗布はかゆみ,腫脹などの局所の対症療法にとどまる。
治療の重心はアナフィラキシーショックの有無,治療である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ56
マムシ咬傷に抗マムシ血清は有効か?
推奨
入院期間の短縮など有効性を示唆するデータがある。マムシ抗毒素に対するアレルギー反応のリスクが低いとはいえない。慎重な検討を行ったうえで使用を考慮してもよいのかもしれない。
推奨の強さと根拠
2D(弱い推奨,とても弱い根拠)
CQ57
動物咬傷に対して湿潤療法は有効か?
推奨
動物咬傷に対して,創の状態によっては湿潤療法を考慮してもよい。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ58
感染を疑う動物咬傷に対して持続洗浄を併用した陰圧閉鎖療法(NPWT)は有効か?
推奨
NPWTは特に嫌気性菌感染を増悪する危険性があることから,感染を疑う動物咬傷に使うべきではない。現時点で,感染を疑う動物咬傷において安全性があるとはいえない。
推奨の強さと根拠
2D(弱い推奨,とても弱い根拠)
第Ⅱ編 感染創診療ガイドライン
1章 感染創の基本事項
CQ1
筋膜までの深さの開放創において,その創を水道水で洗浄することは,滅菌された生理的食塩水で洗浄することに比べて,創部感染の可能性を高めるのか?
推奨
水道水は無菌ではないものの,滅菌された生理的食塩水での洗浄と比較しても創の感染率が特に上がるわけではない。少なくとも筋膜下の骨や腱組織に至らないような比較的表面の軟部組織損傷においては,水道水による創洗浄を行ってもよい。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ2
一次縫合された創において,術後数日目からシャワー浴などで濡らすことは,創部感染の可能性を高めるのか?
推奨
比較的軽度な体表外傷や待機的手術による一次縫合創は,それがきれい(海外論文では“clean wound”と表記)と判断される場合には,1~2日後には創を開放しシャワー浴などで濡らしてもよいし,その後も特にガーゼなどによる被覆をせずともよい。その場合も創感染が生じないわけでは決してないが,創を濡らしたこと・開放したことと創感染との因果関係は低い。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ3
感染創に持続洗浄処置は有効か?
推奨
感染創に対する持続洗浄は細菌数や炎症性サイトカインを減少させ,創傷治癒を促進させることから有用である。さらに,陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy: NPWT)との併用は肉芽の増生をうながす。ただし,適切な洗浄圧での処置が必要であり,軟部組織や骨損傷,また深部へ感染の波及には注意を要する。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ4
感染創に陰圧閉鎖療法(NPWT)は有効か?
推奨
感染創に対するNPWTは,壊死組織除去や全身の抗菌剤投与,また,持続洗浄を併用し,感染の増悪を評価しながら慎重に用いられてもよい。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ5
SSIの予防に縫合創への陰圧閉鎖療法(NPWT)は有用か?
推奨
縫合創へのNPWTは,surgical site infection発症リスクの高い外科手術後の創管理に有効である。
推奨の強さと根拠
1A(強い推奨,強い根拠)
2章 蜂窩織炎
CQ6
診断に画像検査は有用か?
推奨
非膿性蜂窩織炎の軽症例(全身所見のない典型例)に対して画像検査を行っても有意な所見は得られない。膿性蜂窩織炎が疑われる場合は,画像検査を行うことで,膿瘍や液体貯留の有無が判断できる。また,切開部位の判断には侵襲の少ない超音波検査が有用である。他の皮膚軟部組織感染症の鑑別や蜂窩織炎の詳細や全体像を把握することが必要な場合には,MRI検査やCT検査からも有用な情報が得られる。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ7
診断に創部培養検査・血液培養検査は有用か?
推奨
非膿性蜂窩織炎の軽症例(全身所見のない典型例)への培養検査(スワブ法,穿刺吸引,パンチ生検,血液培養)は推奨されないが,患肢の趾間皮膚に浸軟あるいは創がある場合は,この部位からのスワブ法・創部培養検査は考慮してもよい。
膿性蜂窩織炎の切開排膿で得られた膿の培養検査を行うことは推奨されるが,軽症例に対する創のない紅斑部位へのスワブ法,穿刺吸引,パンチ生検を行うことは推奨されない。
膿性および非膿性の蜂窩織炎患者で,化学療法施行中,好中球減少症,重度の細胞性免疫不全,重症併存疾患,リスクファクター(後述)を有する場合,および淡水・海水内での外傷後や動物咬傷後の場合,血液培養検査は推奨され,創部培養・スワブ法・針吸引・パンチ生検は考慮してもよい。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ8
蜂窩織炎を膿性蜂窩織炎と非膿性蜂窩織炎に分けたうえで重症度別に分類することは,診断・治療において有用か?
推奨
蜂窩織炎の診断,治療においてIDSA 2014 guidelinesやRaffら
1)
のアルゴリズムでは同様の診断,治療フローを推奨している。超音波やCTで膿瘍を疑うような液体貯留の有無を確認し,非膿性蜂窩織炎(nonpurulent cellulitis)と膿性蜂窩織炎(purulent cellulitis)に分類し,非膿性であればSIRSスコアをもとに重症度分類し,外科的介入を必要とせず抗生剤による保存加療を行うが,膿性であれば全例で切開排膿を行ったうえで,抗生剤投与を併用することが有効である可能性がある。また,重症例や膿性例の場合にはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染率が高く,早期からの積極的な投与を考慮した方がよい可能性がある。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
3章 壊死性軟部組織感染症
CQ9
診断(および蜂窩織炎との鑑別)に画像検査(CT,MRI撮影)は有用か?
推奨
壊死性軟部組織感染症の診断においては,CT,MRI検査はガス像,筋膜の肥厚,膿の貯留,などを早期にかつ鋭敏に検出することができる有用な検査である。特にMRIは蜂窩織炎と壊死性筋膜炎の鑑別に有用である。
推奨の強さと根拠
1D(強い推奨,とても弱い根拠)
CQ10
早期デブリードマンは一般的なデブリードマンに比べて有効か?
推奨
早期デブリードマンは生命予後の改善に有効である。
推奨の強さと根拠
1C(強い推奨,弱い根拠)
CQ11
高圧酸素を実施する症例は実施しない症例に比べて治療に有効か?
推奨
高圧酸素療法の併用はClostridium性ガス壊疽のみならず,非Clostridium性ガス壊疽などの壊死性軟部組織感染症の予後の改善に有効である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ12
診断前に予防的抗菌薬を投与した方が,しない症例に比べて治療に有効か?
推奨
診断前の抗菌薬を投与は,治療に効果的である。
推奨の強さと根拠
1D(強い推奨,とても弱い根拠)
CQ13
試験切開を実施した方が実施しない場合に比べて有効か?
推奨
壊死性軟部組織感染症を疑う場合に試験切開を行うことは診断に有用である。
推奨の強さと根拠
1D(強い推奨,とても弱い根拠)
4章 骨髄炎
CQ14
四肢慢性骨髄炎の診断にCTは有用か?
推奨
CTは骨変化の詳細な所見を得ることが可能であり,特に慢性骨髄炎における腐骨の検索に有用である。しかし,CTのみでは慢性骨髄炎診断の根拠とはならない。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ15
四肢慢性骨髄炎の診断にMRIは有用か?
推奨
MRIは骨髄炎の診断において高い感度を有し,有用な診断法である。
推奨の強さと根拠
1A(強い推奨,強い根拠)
CQ16
四肢慢性骨髄炎の診断にシンチグラフィは有用か?
推奨
シンチグラフィは各種画像検査を併用することで,四肢慢性骨髄炎の診断に有用である。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ17
四肢慢性骨髄炎の診断にFDG-PET
*
およびPET/CT
*
は有用か?
*
:保険適用外
推奨
他の画像診断と併用することにより,四肢慢性骨髄炎の診断に有用と考えられる。しかし,本邦では保険適用になっておらず,その使用は普及していない。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ18
四肢慢性骨髄炎に持続洗浄を行うことは感染の制御に有効か?
推奨
四肢慢性骨髄炎の外科的デブリードマン後に持続洗浄療法を行うことは,感染の制御に有効である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ19
四肢慢性骨髄炎への抗菌薬長期投与は再燃の予防に有効か?
推奨
感染の再燃を防ぐために,外科的デブリードマン後4~6週間以上の抗菌薬投与が推奨される。
MRSA感染や人工物が残存している場合は,さらに長期の投与が推奨される。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ20
四肢慢性骨髄炎に持続洗浄と陰圧閉鎖療法(NPWT)を併用すると,感染の鎮静化までの期間が短縮するか?
推奨
外科的デブリードマンのあとに慎重な観察のもと洗浄を併用しながらNPWTを行うことで,創閉鎖までの期間を短縮できる可能性がある。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ21
四肢慢性骨髄炎にデブリードマンは有効か?
推奨
慢性骨髄炎の根治には血行のない腐骨をはじめとした壊死組織および細菌や人工物などの異物の除去が推奨される。ただし,患者の全身状態,基礎疾患,デブリードマンによる犠牲の大きさを事前に評価して行うことが必要である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ22
四肢慢性骨髄炎のデブリードマン後の死腔の充填に筋(皮)弁は有効か?
推奨
デブリードマンで生じた死腔や骨欠損に対する再建についてはさまざまなものが報告されている。ところが,慢性骨髄炎の治療は複雑で適切に行ったとしても依然高い再発率を示し,いまだ共通のコンセンサスは確立していない。しかし,血流の悪い組織がベースに存在し感染を生じたという病因を考えれば,筋(皮)弁など血行のよい組織で創面を被覆することが,細菌の増殖を抑え,長期の治癒を得ることができる最もよい方法であり,デブリードマン後の死腔の充填に有用であると考える。
ただし,患者の基礎疾患や全身状態,骨髄炎の病期,骨移植の必要性を加味して複数の治療法から慎重に選択し,多数の専門分野にわたるチームで治療にあたることが望ましい。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
5章 Toxic Shock Syndrome(TSS)
CQ23
TSSの重篤な症状は臨床的に感染徴候が明らかでない創部でも起こり得るか?
推奨
感染徴候が明らかでない創部も,TSSの原因になる可能性がある。全身をくまなく調べ感染源を検索することが必要である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ24
創部および血液の細菌培養検査と薬剤感受性検査は,TSSの診断・治療に有用か?
推奨
TSSを疑う症例で,その原因である可能性が考えられる創部がある場合には,その創部および血液の細菌培養検査と薬剤感受性検査を行うことは有用である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ25
デブリードマンやドレナージなどの創部処置を行うことはTSSの治療において有効か?
推奨
TSSの原因と考えられる創部に対しては,デブリードマンやドレナージなどの創部処置を行うことは有用である。特に,膿瘍形成や壊死性筋膜炎などの明らかな感染創がある場合には,早期にデブリードマンもしくはドレナージを行うべきである。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ26
TSSの治療に推奨される抗生剤は何か?
推奨
TSSを疑う症例では,薬剤感受性検査の結果に従って,細胞壁合成阻害薬(βラクタム系抗生物質・バンコマイシンなど)の投与が推奨される。毒素産生を抑えるために蛋白質合成阻害薬(クリンダマイシンやリネゾリドなど)の同時使用が推奨される。
黄色ブドウ球菌感染創がある場合には,創部に対して局所抗菌剤を用いてもよい。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ27
外毒素を中和する目的での静注用免疫グロブリンの投与はTSSの治療に推奨されるか?
推奨
TSSの補助治療として,静注用免疫グロブリン製剤の投与を考慮してもよい。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ28
ステロイド投与はTSSのショック状態の離脱に有用か?
推奨
TSSの補助治療として,ステロイド投与が死亡率を軽減させる十分なエビデンスはなく,その使用は慎重であるべきである。
推奨の強さと根拠
なし・D(推奨の強さを決められない,とても弱い根拠)
6章 陥入爪・巻き爪
CQ29
陥入爪の予防目的で爪甲の外側先端は側爪郭より遠位まで伸ばすことは有効か?
推奨
不適切な爪切りは爪の巻き込みを悪化させることから,爪甲をスクエアオフに形成し,遠位まで爪甲を伸ばすことが推奨される。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ30
陥入爪に対する保存的治療では,側爪郭皮膚への爪甲陥入を阻害する方法より爪甲形成する方法の方が有効か?
推奨
軽度から中等度の陥入爪では,保存的治療が有効であり,推奨されるとはいえるが,爪甲形成をする方法が爪甲陥入を阻害する方法と比較して優れているとするエビデンスはない。
推奨の強さと根拠
2D(弱い推奨,とても弱い根拠)
CQ31
陥入爪の外科的治療において,フェノール法(chemical matricectomy)の方が楔状切除術(surgical matricectomy)に比べて有効か?
推奨
陥入爪に対する治療として,フェノール法(chemical matricectomy)の方が術後疼痛においては推奨できる。しかし,再発率に関しては一定の見解を得られていない。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ32
弯曲爪(巻き爪)に対する初期治療は保存的治療が推奨されるか?
推奨
弯曲爪(巻き爪)に対する初期治療は保存的治療が推奨される。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ33
弯曲爪(巻き爪)では外科的治療が推奨されるか?
推奨
弯曲爪(巻き爪)では積極的な外科治療は推奨されない。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
第Ⅲ編 ケロイド・肥厚性瘢痕診療ガイドライン
1章 ケロイド
CQ1
ケロイドを発症しやすい体質はあるか?
推奨
ケロイドの発症は人種による違い,遺伝的な要因が認められているが,多因子で発症し,単一因子の体質で発症する科学的根拠は少ない。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ2
ケロイドに手術治療は有効か?
推奨
排膿を繰り返すもの,疼痛や掻痒など自覚症状の強いもの,厚みがあり保存的治療では治療が困難なものに対しては,術後放射線治療などの後療法を前提で行う手術は有効である。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ3
ケロイドに放射線治療は有効か?
推奨
ケロイド切除後の放射線治療は有意に再発率を下げるため推奨される。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ4
ケロイドにトラニラストの内服は有効か?
推奨
トラニラストの内服は,ケロイドの増大,症状の改善および術後の再発予防に推奨される。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ5
ケロイドにステロイド薬は有効か?
推奨
ケロイド治療でステロイド薬の局所注射は最も効果が期待でき,ステロイド貼付剤は適切な使用によりケロイド症状の改善が期待できる。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ6
ケロイドにレーザー治療は有効か?
推奨
ケロイドに対する色素レーザー,Nd:YAGレーザー単独の治療は,ある程度の効果が期待できるが,ケロイドの厚さや色調によって,レーザーの組み合わせあるいは他の併用療法も考慮すべきである。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ7
ケロイドにシリコーンジェルシートは有効か?
推奨
予防的使用(切除後再発予防)で再発率低下の可能性はあるが,その科学的根拠は弱い。治療的使用においても,症状を軽減させる可能性はあるが,やはり科学的根拠は弱い。非侵襲性であり,重篤な副作用,合併症を生じない利点が存在する。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ8
ケロイドに圧迫・固定療法は有効か?
推奨
耳垂および耳介ケロイドに対して,術後再発予防の一定の効果はあるが,科学的根拠は弱い。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ9
ざ瘡やピアス刺入後などにケロイドは予防できるか?
推奨
耳介部では耳垂部よりケロイド発生が高くなることより,耳介部のピアスは避けた方がよい。
また,ピアスの抜き刺しを繰り返すことなど炎症反応を強くする行為を避け,ざ瘡に対しては早期に適切な処置を行うことがケロイド予防につながる。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ10
ケロイド治療後の経過観察に必要な期間はどのくらいか?
推奨
最低2年間の経過観察が必要と考えられる。しかし,放射線治療,ステロイド薬など併用療法の副作用を考慮した場合,さらに長期に経過観察が必要と考えられる。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
2章 肥厚性瘢痕
CQ11
肥厚性瘢痕は受傷後どのくらいの期間で発症するか?
推奨
肥厚性瘢痕は,創部の閉鎖後に局所の炎症が遷延し数週間程度から顕在化する(1D)。
発症後には,早期の治療の介入による治療成績の向上が望めるため,慎重な経過観察が必要である(1C)。
推奨の強さと根拠
1D(強い推奨,とても弱い根拠),1C(強い推奨,弱い根拠)
CQ12
肥厚性瘢痕に手術治療は有効か?
推奨
肥厚性瘢痕に対して外科的切除を行ってもよい(2C)。
創縁に緊張を伴う場合には,縫合部の緊張の解除が推奨される(1C)。
瘢痕拘縮を伴う場合には,瘢痕拘縮の形成を行うことが推奨される(1C)。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠),1C(強い推奨,弱い根拠)
CQ13
肥厚性瘢痕にトラニラストの内服は有効か?
推奨
トラニラストは,他の治療法との併用や局所治療が困難な広範囲の病変の症状改善に対して有効である。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ14
肥厚性瘢痕にステロイド薬は有効か?
推奨
肥厚性瘢痕にステロイド薬は有効である。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ15
肥厚性瘢痕にレーザー治療は有効か?
推奨
肥厚性瘢痕にレーザー治療は有効である。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ16
肥厚性瘢痕治療にシリコーンジェルシートは有効か?
推奨
肥厚性瘢痕治療にシリコーンジェルシート
*
は有効である。
*
:保険適用外
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ17
肥厚性瘢痕治療に圧迫・固定療法は有効か?
推奨
肥厚性瘢痕治療に圧迫・固定療法は有効である。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ18
手術後の肥厚性瘢痕は真皮縫合によって予防できるか?
推奨
真皮縫合は,肥厚性瘢痕を少なくして肥厚性瘢痕を予防するための重要な手技であるが,真皮縫合のみでは予防できない。真皮にかかる張力を減少することが予防上重要である。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ19
肥厚性瘢痕治療後の経過観察に必要な期間はどのくらいか?
推奨
最低3カ月~2年の経過観察が必要である。肥厚性瘢痕のみられる部位によっては,長期の経過観察が必要である。
推奨の強さと根拠
2D(弱い推奨,とても弱い根拠)
3章 瘢痕拘縮
CQ20
瘢痕拘縮の評価に各種瘢痕スケールは有用か?
推奨
拘縮による機能運動評価にはThe Burn Specific Health Scale(BSHS),Quick Disability of the Arm, Shoulder, and Hand(DASH)が有用である。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ21
瘢痕拘縮の評価に関節可動域(ROM)測定は有用か?
推奨
ROM測定は治療効果の判定やリハビリテーションのゴール設定には有用である。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ22
瘢痕拘縮に手術療法は有効か?
推奨
完成された瘢痕拘縮に対し手術療法は有効である。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ23
瘢痕拘縮にZ形成術は有効か?
推奨
線状瘢痕拘縮に対するZ形成術は,拘縮に沿った組織の延長が可能であり緊張の解除と可動性の獲得に有効である。
推奨の強さと根拠
1C(強い推奨,弱い根拠)
CQ24
瘢痕拘縮に植皮術は有効か?
推奨
面状に瘢痕拘縮を起こしている部位では,瘢痕切除により生じた皮膚欠損に植皮術を行うことは拘縮解除に有効である。
推奨の強さと根拠
1C(強い推奨,弱い根拠)
CQ25
瘢痕拘縮に皮弁術は有効か?
推奨
瘢痕拘縮部を皮弁に置き換える,もしくは瘢痕拘縮部をリリースし皮弁を介在させることは拘縮の改善を期待できる。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ26
瘢痕拘縮に組織拡張器(tissue expander)による再建手術法による手術は有効か?
推奨
瘢痕拘縮に組織拡張器(tissue expander)による再建手術法は,拡張した正常皮膚を用いることで瘢痕拘縮の治療に利用可能である。特に有茎穿通枝皮弁と組み合わせることで,さまざまな瘢痕拘縮の治療に応用可能である。
推奨の強さと根拠
1C(強い推奨,弱い根拠)
CQ27
瘢痕拘縮の予防に圧迫・固定療法は有効か?
推奨
瘢痕拘縮の予防に圧迫・固定療法は有効である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ28
瘢痕拘縮の予防に運動療法は有効か?
推奨
瘢痕拘縮の予防に運動療法は有効である。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ29
瘢痕拘縮の予防にステロイド薬は有効か?
推奨
瘢痕拘縮の予防にステロイド薬は有効である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ30
瘢痕拘縮治療後の経過観察に必要な期間はどのくらいか?
推奨
瘢痕拘縮治療後の経過観察に必要な期間は1年半程度である。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
4章 醜状瘢痕
CQ31
醜状瘢痕の赤み,色素沈着の評価に分光測色計は有用か?
推奨
醜状瘢痕の診断に分光測色計を用いてもよい。
推奨の強さと根拠
2A(弱い推奨,強い根拠)
CQ32
醜状瘢痕のケロイド・肥厚性瘢痕との鑑別診断に硬度計は有用か?
推奨
醜状瘢痕の診断に硬度計を用いて評価してもよい。
推奨の強さと根拠
2A(弱い推奨,強い根拠)
CQ33
手術後の醜状瘢痕予防にテープ固定は有効か?
推奨
手術後の瘢痕にテープ固定を行うことにより,醜状瘢痕の予防効果がある。
推奨の強さと根拠
1A(強い推奨,強い根拠)
CQ34
顔面の醜状瘢痕の予防にボツリヌス毒素は有効か?
推奨
顔面や頭頸部の醜状瘢痕の予防には,ボツリヌス毒素
*
の局所注射を用いてもよい。
*
:保険適用外
推奨の強さと根拠
2A(弱い推奨,強い根拠)
CQ35
醜状瘢痕に混在する毛細血管拡張にレーザーを含めた光治療は有用か?
推奨
醜状瘢痕に混在する毛細血管拡張に対し,レーザーを含めた光治療を行ってもよい
*
。
*
:保険適用外
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ36
醜状瘢痕にフラクショナルレーザーは有効か?
推奨
醜状瘢痕に対してフラクショナルレーザー
*
は有効である。特にニキビ跡の治療には有効性が高い。
*
:保険適用外
推奨の強さと根拠
2A(弱い推奨,強い根拠)
CQ37
醜状瘢痕の色素脱出に対して表皮移植は有効か?
推奨
醜状瘢痕の色素脱失に対し基底細胞を含んだ表皮移植を行うと色素脱失を軽減できる可能性がある
*
。
*
:保険適用外
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ38
醜状瘢痕に脂肪(細胞)移植は有効か?
推奨
醜状瘢痕の治療に脂肪移植
*
は有効である。
*
:保険適用外
推奨の強さと根拠
2A(弱い推奨,強い根拠)
CQ39
醜状瘢痕に手術治療は有効か?
推奨
醜状瘢痕を縫縮,Z形成術やW形成術,植皮などで改善することができる
*
。
*
:保険適用外
推奨の強さと根拠
1C(強い推奨,弱い根拠)
CQ40
醜状瘢痕は時間経過とともに質感が改善するか?
推奨
醜状瘢痕は時間経過とともに質感が改善することは見込めず,改善を希望する場合には治療を要する。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
第Ⅳ編 慢性創傷診療ガイドライン
1章 胸骨骨髄炎・縦隔炎
CQ1
胸骨骨髄炎・縦隔炎発症の発生率,死亡率はどの程度か?
推奨
本邦の胸骨骨髄炎・縦隔炎の発生率は0.6~1.8%,死亡率は9.2~25%である。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ2
胸骨骨髄炎・縦隔炎発症のリスクファクターは何か?
推奨
縦隔炎発症のリスクファクターには,肥満,糖尿病,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease: COPD),能動喫煙,両側内胸動脈の使用,女性,術後合併症による再手術,術後輸血量などがある。
推奨の強さと根拠
1A(強い推奨,強い根拠)
CQ3
診断において画像検査は有用か?
推奨
胸骨骨髄炎・縦隔炎の診断において画像検査は有用である。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ4
評価において細菌・真菌培養検査は有用か?
推奨
胸骨骨髄炎・縦隔炎の評価において細菌・真菌培養検査は有用である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ5
抗生剤の全身投与は有効か?
推奨
胸骨骨髄炎・縦隔炎における抗生剤の全身投与は有効である。
推奨の強さと根拠
2C(弱く推奨する,弱い根拠)
CQ6
局所への抗生剤投与は有効か?
推奨
胸骨骨髄炎・縦隔炎における創傷管理として局所への抗生剤の投与は考慮してもよい。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ7
高気圧酸素療法は有効か?
推奨
胸骨骨髄炎・縦隔炎における創傷管理として高気圧酸素療法は考慮してもよい。
推奨の強さと根拠
2C(弱く推奨する,弱い根拠)
CQ8
糖尿病を合併した胸骨骨髄炎・縦隔炎に対する血糖管理は有効か?
推奨
糖尿病を合併した胸骨骨髄炎・縦隔炎症例では,適切な血糖管理が推奨される。(1B)
手術侵襲により高血糖を呈する場合は,非糖尿病患者であっても血糖管理が推奨される。(1B)
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ9
胸骨骨髄炎・縦隔炎に対して洗浄は有効か?
推奨
縦隔炎に対して洗浄は有効である。(2B)
NPWTi-dも有効である。(2C)
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ10
胸骨骨髄炎・縦隔炎に対して局所陰圧閉鎖療法(NPWT)は有効か?
推奨
胸骨骨髄炎・縦隔炎に対してNPWTは有効である。(2B)
心臓・大血管・人工血管の露出を認める胸骨骨髄炎・縦隔炎にはNPWTは禁忌であるが,直接フォームを臓器に貼付しないなどの注意をすれば使用してもよい。(2C)
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ11
デブリードマンは有効か?
推奨
感染・壊死を生じた胸骨・肋軟骨のデブリードマン,特に早期のデブリードマンは有効である。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ12
人工物の除去は創傷治癒に有効か?
推奨
開心術後に縦隔に遺残する人工物として,胸骨ワイヤー,骨蝋,フェルト,人工血管などが挙げられる。縦隔炎が発症した場合,これらの除去が推奨される。
ただし,人工血管の再置換術は生命に直結するリスクを伴うため,慎重な検討を要する。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ13
自家組織による再建手術は有効か?
推奨
自家組織による再建手術は感染の程度,壊死の範囲,胸骨の状態,人工物露出の有無によって有効性が異なり,症例によって必要性を検討する。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ14
一期的と二期的再建はどちらが有効か?
推奨
一期的再建と二期的再建の選択のどちらが有効か明確なエビデンスはないが,全身状態が不良な場合や感染が残存している場合は二期的に再建を行う方が望ましい。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ15
硬性再建は必要か?
推奨
人工物での硬性再建(胸骨の固定性を目的とした再建)は必ずしも必要ではなく,胸骨の安定性や血流状態,欠損範囲に応じて硬性再建の必要性を判断する。筋弁や大網などの軟部組織による再建でも呼吸機能が著しく損なわれることは少ない。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ16
再建手術に有茎筋(皮)弁(大胸筋,腹直筋,広背筋)は有効か?
推奨
胸骨骨髄炎・縦隔炎の再建治療に有茎筋(皮)弁は有用である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ17
再建手術に遊離(筋)皮弁は有効か?
推奨
縦隔炎の治療では遊離(筋)皮弁は有効である
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
2章 静脈うっ滞性潰瘍
CQ18
診断において病歴聴取・理学的所見は有用か?
推奨
静脈うっ滞性潰瘍において,下腿の静脈瘤,皮膚炎,脂肪皮膚硬化症,色素沈着などの他覚所見に加え,痛み,重苦しさ,かゆみ,こむらがえりなどの自覚症状,およびその経過を把握することは診断を進めるうえで有用である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ19
診断においてドプラ聴診器や脈波法は有用か?
推奨
ドプラ聴診器や脈波法(plethysmography)は非侵襲的な検査であり,慢性静脈不全の診断に有用である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ20
診断において生検は有用か?
推奨
他の疾患との鑑別が必要と考えられる場合には生検は有用である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ21
診断において細菌培養は有用か?
推奨
細菌感染症,非結核性抗酸菌症,真菌症などの鑑別のためには細菌培養を考慮する。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ22
評価にDuplex超音波検査法は有用か?
推奨
Duplex超音波検査法は非侵襲的で正確性が高く有用である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ23
評価に画像検査は有用か?
推奨
種々の画像検査は慢性静脈不全を形態的,機能的に評価するのに有用である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ24
圧迫療法は有効か?
推奨
圧迫療法は有効であり,静脈性潰瘍の治癒率を向上させる。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ25
創傷被覆材の使用は有効か?
推奨
創傷被覆材の静脈うっ滞性潰瘍に対する治療効果は他の外用薬を用いた治療と比較して有意差を認めていない。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ26
局所陰圧閉鎖療法(NPWT)は有効か?
推奨
局所陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy: NPWT)を静脈うっ滞性潰瘍に用いると肉芽形成を促進する。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ27
高(気)圧酸素療法は有効か?
推奨
静脈うっ帯性潰瘍に対し高(気)圧酸素療法を行ってもよい。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ28
抗血栓薬は有効か?
推奨
アスピリンが静脈うっ滞性潰瘍の改善に有効である根拠はない
推奨の強さと根拠
なし・B(推奨の強さを決められない,中程度の根拠)
CQ29
感染制御に抗生物質の全身投与は有効か?
推奨
感染が明らかでない静脈うっ滞性潰瘍に対しての抗生物質の全身投与は推奨されず,critical infectionが明らかになったときのみ,その投与を考慮すべきである。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ30
感染制御に消毒剤は有効か?
推奨
局所感染性制御のためにはバイオフィルム除去が重要であり,バイオフィルムを不活化させる機能をもつ外用薬は有効である可能性がある。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ31
表在静脈不全に硬化療法は有用か?
推奨
表在静脈不全の治療において,硬化療法は圧迫療法と併用した場合に有効であり,特に外科的治療が適さない場合には行ってもよい。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ32
表在静脈不全に対する手術治療は有効か?
推奨
伏在静脈不全に対し高位結紮とストリッピングを行うことは,保存的治療のみを行った場合と比較して治癒率の改善や治癒期間短縮に有効性を認めないが,再発率を低下させる。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ33
表在静脈不全に対する血管内焼灼術は有効か?
推奨
表在静脈不全に対するレーザーもしくはラジオ波による血管内焼灼術は,従来の手術治療とほぼ同様に有効であり,かつ侵襲が少なく,表在静脈不全に対し血管内熱焼灼術は行ってもよい。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ34
不全穿通枝に対する手術治療は有効か?
推奨
静脈うっ滞性潰瘍の治療において,不全穿通枝に対し手術治療,特に内視鏡的筋膜下穿通枝切離術(subfascial endoscopic perforator surgery: SEPS)は行ってもよい。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ35
自家皮膚移植は有効か?
推奨
症例によって結果は安定せず,短期間で再発することもある。血管手術や圧迫療法を併用した方が良好な長期結果を得られる可能性が高くなる。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ36
有茎皮弁移植は有効か?
推奨
重篤な皮膚脂肪硬化症のある,自家皮膚移植無効例の静脈うっ滞性潰瘍では病変組織の切除後の欠損部が有茎皮弁で覆える大きさであるならば有茎皮弁移植は有効である。
推奨の強さと根拠
2D(弱い推奨,とても弱い根拠)
CQ37
遊離皮弁移植は有効か?
推奨
広範囲に皮膚脂肪硬化症のある,自家皮膚移植無効例の重症静脈うっ滞性潰瘍では遊離皮弁移植が有効である。
推奨の強さと根拠
2D(弱い推奨,とても弱い根拠)
CQ38
弾性ストッキングの着用は静脈うっ滞性潰瘍の再発予防に有効か?
推奨
静脈うっ滞性潰瘍の再発予防に弾性ストッキングの着用が推奨される。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ39
下腿筋肉ポンプ機能を増強する運動は静脈うっ滞性潰瘍の再発予防に有効か?
推奨
下腿筋肉ポンプ機能を増強する運動は静脈うっ滞性潰瘍の再発予防に有効である可能性がある。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ40
抗凝固療法は静脈うっ滞性潰瘍の再発予防に有効か?
推奨
深部静脈血栓症(DVT)後の血栓後症候群(post-thrombotic syndrome: PTS)による静脈うっ滞性潰瘍の再発予防に抗凝固療法は有効である可能性がある。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ41
内視鏡的筋膜下穿通枝切離術(SEPS)は静脈うっ滞性潰瘍の再発予防に有効か?
推奨
静脈うっ滞性潰瘍の再発予防にSEPSは有効である可能性がある。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ42
表在静脈不全に対する手術は再発予防に有効か?
推奨
表在静脈不全に対する手術は静脈うっ滞性潰瘍の再発率を低下させる可能性が高い。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ43
硬化療法は静脈うっ滞性潰瘍の再発予防に有効か?
推奨
静脈うっ滞性潰瘍の再発予防に硬化療法は有効である可能性がある。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
3章 糖尿病性潰瘍
CQ44
神戸分類は有用か?
推奨
神戸分類は簡便で,優先させる治療がわかりやすく有用である。
推奨の強さと根拠
1C(強い推奨,弱い根拠)
CQ45
栄養状態の評価は有用か?
推奨
栄養状態と創傷の重症度には相関があり,高度の栄養障害は大切断,死亡のリスクファクターである。栄養状態の改善は創傷治癒の促進,大切断,死亡リスクの軽減につながる可能性があるため,栄養評価を行い栄養管理への介入を行うことを推奨する。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ46
血流評価は有用か?
推奨
糖尿病性潰瘍患者の半数近くは末梢動脈疾患(PAD)を合併しており,PADに対する治療なしでは大切断のリスクが増加するため,PADの診断のため血流評価は必須である。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ47
神経障害の評価は有用か?
推奨
神経障害および足変形の存在は潰瘍発生のリスクファクターであり,評価を行うことを推奨する。
推奨の強さと根拠
1A(強い推奨,強い根拠)
CQ48
感染の評価に創培養は有用か?
推奨
抗菌薬投与が必要な感染創に対し,起因菌同定と薬剤感受性検査を行うために創培養を行うことは有用である。
推奨の強さと根拠
1C(強い推奨,弱い根拠)
CQ49
骨髄炎の評価に画像診断は有用か?
推奨
骨髄炎が疑われる患者に対し,各種画像検査を行うことを推奨する。病巣の範囲やより正確な診断が必要な場合はMRIが有用である。MRIが困難な場合は骨シンチグラフィ,FDG-PET
*
を考慮する。
*
:保険適用外
推奨の強さと根拠
1A(強い推奨,強い根拠)
CQ50
血液透析を行っている患者では大切断になる割合が高くなるか?
推奨
透析治療を行っている患者においては末梢動脈疾患(PAD)が合併していると,非透析患者に比較して大切断,死亡率,創傷治癒不全のリスクが上昇する。また,透析患者では大切断後の死亡率が非透析患者に比較して高くなる。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ51
血糖管理は有効か?
推奨
高血糖状態や血糖値変動幅の上昇は易感染性,神経障害や細小血管障害・大血管障害などのリスクファクターの発症,創傷治癒障害につながる。血糖を良好に管理することは予防,治療の観点からも重要である。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中等度の根拠)
CQ52
併発した軟部組織感染症の治療に抗菌外用剤は有効か?
推奨
銀などを含有する抗菌性被覆材は糖尿病性潰瘍の感染制御に有効である。(2C)
抗菌外用剤としてヨウ素製剤,銀製剤は糖尿病性潰瘍の感染制御に有効である。(2C)
抗菌薬含有軟膏は十分な根拠がないので,使用を控えることを提案する。(2C)
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ53
併発した軟部組織感染症の治療に抗菌薬の全身投与は有効か?
推奨
糖尿病性潰瘍に併発した軟部組織感染症の治療には,抗菌薬の全身投与が有効である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ54
併発した慢性骨髄炎の治療に抗菌薬の全身投与は有効か?
推奨
糖尿病性潰瘍に併発した骨髄炎に対して,適切な抗菌薬の投与は有効である。
6週にわたる投与が必要とされるが,十分なデブリードマンが行われた場合にはその投与期間を短縮することができる。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中等度の根拠)
CQ55
局所陰圧閉鎖療法(NPWT)は有効か?
推奨
局所陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy: NPWT)は,糖尿病性足潰瘍の創傷治癒を促進する。特に,部分切断術後や壊死組織のデブリードマン後の創傷管理として有効である。
なお,血流障害を有する患者では,陰圧負荷により局所血流を阻害し悪化する可能性があるため,創傷治癒が見込める血流を有しているかの評価が必要である。また,低圧から開始するなどの注意が必要である。
推奨の強さと根拠
1A(強い推奨,強い根拠)
CQ56
洗浄機能を付加した局所陰圧閉鎖療法(NPWT)は有効か?
推奨
感染を伴った糖尿病性潰瘍に対して,洗浄機能を付加したNPWTは創傷治癒を促進する。ただし,デブリードマンや抗菌薬の投与などによる適切な感染治療の併用は必要である。
なお,血流障害を有する患者では,陰圧負荷により局所血流を阻害し悪化する可能性があるため,創傷治癒が見込める血流を有しているかの評価が必要である。また,低圧から開始するなどの注意が必要である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ57
ドレッシング材の使用は有効か?
推奨
ハイドロコロイド製剤は湿潤環境を提供し,糖尿病性潰瘍に使用してもよい。(2C)
ハイドロゲル製剤は湿潤環境を提供し,ガーゼドレッシングより有効である。(2B)
アルギン酸製剤は湿潤環境を提供し,糖尿病性潰瘍に使用してもよい。(2C)
ポリウレタンフォーム製剤は湿潤環境を提供し,糖尿病性潰瘍に使用してもよい。(2C)
ヒアルロン酸ドレッシングは創傷治癒に有利に働く。(2C)
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠),2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ58
サイトカイン成長因子局所投与は有効か?
推奨
サイトカイン成長因子は糖尿病性潰瘍に対し有効である。(1A)
上皮成長因子(Epidermal Growth Factor: EGF)は糖尿病性潰瘍の創傷治癒を促進する
*
。(1A)
血小板由来成長因子(Platelet-Derived Growth Factor: PDGF)製剤は創傷治癒を促進させる
*
。(1B)
多血小板血漿(Platelet-Rich Plasma: PRP)は創傷治癒を促進させる。(1A)
塩基性線維芽細胞成長因子(basic Fibroblast Growth Factor: b-FGF)は創傷治癒を促進させる。(1B)
羊膜性ドレッシング(amniotic membrane)は創傷治癒に有利に働く
*
。(1B)
顆粒球コロニー形成刺激因子(Granulocyte-Colony Stimulating Factor: G-CSF)は創傷治癒に有利に働く
*
。(2C)
*
:本邦では保険適用外または未承認
推奨の強さと根拠
1A(強い推奨,強い根拠),1B(強い推奨,中程度の根拠),2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ59
高気圧酸素療法は有効か?
推奨
高気圧酸素療法は潰瘍を改善させ,大切断率を下げる可能性がある。
推奨の強さと根拠
1A(強い推奨,強い根拠)
CQ60
マゴット療法は有効か?
推奨
マゴット療法
*
は潰瘍面の壊死組織を除去することにより,創傷治癒に対し有利に働く。
*
:保険適用外
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ61
細胞治療は有効か?
推奨
線維芽細胞/ケラチノサイト治療は創傷治癒を促進する
*
。(2B)
脂肪細胞治療は創傷治癒を促進する
*
。(2A)
幹細胞治療は創傷治癒を促進する
*
。(2A)
*
:保険適用外
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中等度の根拠),2A(弱い推奨,強い根拠)
CQ62
免荷は有効か?
推奨
糖尿病性足潰瘍の治療において,免荷は重要である。Total Contact Cast(TCC)などの非着脱式免荷装具はよい治療効果を示すが,頻回の交換,創部および足部合併症の評価が必要である。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ63
外科的デブリードマンは有効か?
推奨
糖尿病性潰瘍に対する外科的デブリードマンは局所感染のリスクを下げ,潰瘍治癒を促進する。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ64
腱延長術や腱切り術(腱に対する手術)は有効か?
推奨
アキレス腱延長術は前足部の圧を減少させて糖尿病性潰瘍の治癒を促進させる。
経皮的屈筋腱切り術は治療・予防において有効な方法である。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ65
皮弁手術は植皮術に比較して有効か?
推奨
植皮術,皮弁手術ともに創治癒には有効であるが,皮弁手術が植皮術に対して優位との実証はない。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ66
骨変形を伴う症例では骨・軟骨に対する手術は有効か?
推奨
骨変形を伴う糖尿病性潰瘍では,潰瘍治癒・歩行改善・患肢救済のために,偏位した骨の観血的整復および固定を行うことが推奨される。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ67
再発予防に定期的な足の観察は有効か?
推奨
糖尿病性足潰瘍の再発予防には,1年に1回から3カ月に1回程度,その重症度に応じて定期的な専門家による診察が推奨される。
推奨の強さと根拠
1C(強い推奨,弱い根拠)
CQ68
再発予防に患者,家族,医療従事者の教育が有効か?
推奨
糖尿病患者への教育はその状態評価,装具励行,治療への動機づけと並行して包括的に行うことで,発生,また再発の防止に有効である。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ69
再発予防に胼胝切除が有効か?
推奨
糖尿病患者の足の胼胝を適切に除去,除圧することは,潰瘍発生,また再発の防止に有効である。
推奨の強さと根拠
1C(強い推奨,弱い根拠)
CQ70
再発予防に足白癬治療は有効か?
推奨
糖尿病患者に足白癬の診察および治療を行うことは,発生,また再発の防止に有効である。
推奨の強さと根拠
1C(強い推奨,弱い根拠)
4章 虚血性潰瘍
CQ71
WIfI分類は有用か?
推奨
糖尿病性足潰瘍やPADの患者における血行再建の有用性,創傷治癒および下肢大切断リスクの予想を行うのにWIfI分類は有用である。
推奨の強さと根拠
1A(強い推奨,強い根拠)
CQ72
足関節・上腕血圧比(ABI)は有用か?
推奨
末梢血流障害に対するスクリーニングとして,足関節・上腕血圧比(ankle brachial pressure index: ABI)は有用である。ただし,足関節より末梢の病変や,糖尿病や末期腎不全患者など血管の石灰化が疑われる症例では正確な評価が困難でありほかの検査を要する。
推奨の強さと根拠
1A(強い推奨,強い根拠)
CQ73
皮膚灌流圧(SPP)は有効か?
推奨
SPPは,PADの評価,スクリーニング,創傷治癒予測に有用である。30mmHg以下では創傷治癒が望めないため,血行再建を検討すべきである。
推奨の強さと根拠
1A(強い推奨,強い根拠)
CQ74
経皮的酸素分圧測定(TcPO
2
)は有用か?
推奨
TcPO
2
は,PADの評価,スクリーニング,創傷治癒予測に有用である。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ75
足趾・上腕血圧比(TBI)は有用か?
推奨
TBIは,糖尿病・末期腎不全患者などの血管の石灰化によりABIが異常高値を示す症例に対し有用である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ76
血管造影は有用か?
推奨
PADの診断/評価において血管造影は有用であるが,侵襲的であり,末梢血行再建を前提とする場合に行うべきである。
推奨の強さと根拠
1A(強い推奨,強い根拠)
CQ77
超音波検査は有用か?
推奨
PADの診断/評価において,超音波検査は有用である。簡便で低侵襲であるが診断の精度はやや劣るため,他の検査と組み合わせて行うべきである。
推奨の強さと根拠
1A(強い推奨,強い根拠)
CQ78
MRAは有用か?
推奨
PADの診断/評価において,MRAは有用である。特に造影MRAはCTAや超音波検査より精度が高いが,MRI禁忌の人工物や腎機能低下患者では腎性全身性線維症(nephrogenic systemic fibrosis: NSF)の発生に注意が必要である。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ79
CTAは有用か?
推奨
PADの診断/評価において,CTAは有用である。MRAに比べやや精度は劣るが,超音波検査よりは優れる傾向にある。ただし,血管石灰化の影響を受けやすく,症例を選ぶ必要がある。
推奨の強さと根拠
1A(強い推奨,強い根拠)
CQ80
抗血小板薬は重症下肢虚血(CLI)の創治癒に有効か?
推奨
虚血性潰瘍における抗血小板薬(シロスタゾール)は創治癒に有効であるが,症例により考慮する必要がある。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ81
抗凝固薬はCLIの創治癒に有効か?
推奨
虚血性潰瘍における抗凝固薬は創治癒に有効である根拠はない。
推奨の強さと根拠
2D(弱い推奨,とても弱い根拠)
CQ82
血管拡張薬はCLIの創治癒に有効か?
推奨
虚血性潰瘍における血管拡張薬は一部の患者の創治癒に有効であるが,有害事象の発生が多く慎重に適応を検討する必要がある。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ83
血管内治療(EVT)はCLIの創治癒に有効か?
推奨
CLIに対するEVTは創治癒の観点からも有効である。特に,低侵襲であるためリスクの高い症例に対し有効であるが,重症症例においては効果が低く症例により考慮する必要がある。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ84
外科的バイパス術はCLIの創治癒に有効か?
推奨
CLIに対する外科的バイパス術は創治癒の観点からも有効である。しかし侵襲が大きいため,症例により考慮する必要がある。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ85
EVTは外科的バイパス術よりCLIの創治癒に有効か?
推奨
EVTは外科的バイパス術より創治癒の効果は劣るが,低侵襲であるため高リスクの患者あるいは中等度までの潰瘍患者においては有効である。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ86
外科的バイパス術を行う際,自家組織グラフトは人工血管に比べCLI の創治癒に有効か?
推奨
外科的バイパス術を行う際,自家組織グラフトは人工血管に比べCL の創治癒に有効であるが,今後さらなる検討が必要である。
推奨の強さと根拠
2D(弱い推奨,とても弱い根拠)
CQ87
CQ87-a
理学療法は有効か?
運動療法は有効か?
推奨
理学療法には運動療法が含まれるが,虚血性潰瘍患者に対して適応は考慮してよいものの,慎重を要する。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ87-b
超音波療法は有効か?
推奨
超音波療法は,慢性潰瘍の創傷治癒を促進する可能性がある。褥瘡と下腿潰瘍において広く研究されており,虚血性潰瘍の補助療法として考慮してもよい。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ87-c
電気刺激は有効か?
推奨
電気刺激は組織内の酸素濃度を上昇させることで慢性潰瘍の創傷治癒を促進する。よって,虚血性潰瘍の補助療法として考慮してもよい。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ87-d
疼痛レベルの軽減に脊髄電気刺激は有効か?
推奨
脊髄電気刺激は,虚血性潰瘍の補助療法として有効である。特に疼痛レベルの軽減に有効であり切断のリスクを低下させる。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ87-e
血行再建前後の間欠的空気圧迫治療は有効か?
推奨
血行再建前後の間欠的空気圧迫治療は,血流を増大させ,遠位部血流が低下した下肢の血行再建前後で有効となる可能性がある。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ88
局所陰圧閉鎖療法(NPWT)は有効か?
推奨
局所陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy: NPWT)は,虚血性潰瘍において創傷治癒を促進させる補助療法の1つとして有効であるが,施行する前に潰瘍周囲の血流改善を考慮する。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ89
高(気)圧酸素療法は有効か?
推奨
高(気)圧酸素療法は虚血組織において酸素供給を増大させて創傷治癒を促進し,肢切断率を低下させるのに有効である。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ90
細胞治療は有効か?
推奨
細胞治療はサイトカインの豊富な自己骨髄細胞を採取し,単核球,血小板層を分離・濃縮し虚血性患者自身の虚血患肢筋肉内に注射する新療法として有望である
*
。
*
:保険適用外
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ91
遺伝子治療(血管内皮増殖因子:VEGF)は有効か?
推奨
血管内皮増殖因子(VEGF)による遺伝子治療は,虚血性潰瘍の補助療法として有効である。
推奨の強さと根拠
2B(弱い推奨,中程度の根拠)
CQ92
局所酸素療法は有効か?
推奨
末梢循環不全により壊死が進行する症例や感染制御が困難な症例では,局所酸素療法による創傷局所への酸素供給が効果的である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ93
マゴット療法は有効か?
推奨
虚血性潰瘍において,慢性化した潰瘍面の壊死組織を効果的に除去するのにマゴット療法は有効である。また,マゴット療法による創面の清浄化,細菌数の減少が期待できる
*
。
*
:保険適用外
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ94
LDLアフェレーシスは有効か?
推奨
虚血性潰瘍の患者にLDLアフェレーシスを行うことにより,総コレステロール値やLDL値,フィブリノゲン値が低下し,潰瘍の縮小などの創治癒促進につながる可能性がある。
推奨の強さと根拠
1C(強い推奨,弱い根拠)
CQ95
外科的デブリードマンは有効か?
推奨
壊死組織や不活化組織のデブリードマンは,正常な創傷治癒を誘導するが,虚血性潰瘍の場合は,慎重に時期を見極める必要がある。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ96
圧迫療法は有効か?
推奨
推奨 病因が混在している(動脈性と静脈性)潰瘍には有効かもしれない。ただし,虚血の治療を先行する必要がある。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ97
外用薬や創傷被覆材は有効か?
推奨
虚血性潰瘍に対し,外用薬や創傷被覆材は有効である。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ98
皮膚移植や皮弁などの手術は有効か?
推奨
十分な血流が確保されていれば,皮膚移植や皮弁は創傷の閉鎖を促進し得る。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ99
生活指導は再発・予防に有効か?
推奨
生活指導は,虚血性潰瘍の再発・予防に有効である。特に禁煙,栄養指導および度な運動療法が重要である。
推奨の強さと根拠
1A(強い推奨,強い根拠)
CQ100
フットウェアの使用は再発・予防に有効か?
推奨
虚血性潰瘍におけるフットウェアの使用は再発・予防に有効であるが,症例により慎重に考慮する必要がある。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ101
足の診察・観察は再発・予防に有効か?
推奨
虚血性潰瘍における診察・観察は再発・予防に有効であるが,長期化するため,患者やその家族による観察が重要である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
5章 膠原病性潰瘍
CQ102
プロスタグランジン製剤は膠原病性皮膚潰瘍の治療に有効か?
推奨
プロスタグランジン製剤は膠原病性潰瘍に対し,潰瘍の縮小や再発予防などに有効である。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ103
抗凝固剤,抗血小板剤,抗トロンビン剤などの抗血栓剤は膠原病性皮膚潰瘍の治療に有効か?
推奨
膠原病性潰瘍に対し抗凝固剤,抗血小板剤,抗トロンビン剤などの抗血栓剤は病態に応じて選択すれば有効である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ104
カルシウム拮抗薬は全身性強皮症に伴う皮膚潰瘍の治療に有効か?
推奨
全身性強皮症の皮膚潰瘍に対するカルシウム拮抗薬の有効性を直接評価した報告は少ないが,カルシウム拮抗薬はレイノー症状の改善に有効であるため,レイノー症状に起因した潰瘍に対しては効果が期待される。全身性強皮症における皮膚潰瘍に対する治療の選択肢の1つとして提案する。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ105
エンドセリン受容体拮抗薬は全身性強皮症に伴う皮膚潰瘍の治療に有効か?
推奨
エンドセリン受容体拮抗薬は指尖潰瘍の新生を抑制する目的として,投与することを推奨する。既存する潰瘍に対しては治療の選択肢の1つとして推奨する。
推奨の強さと根拠
1B(強い推奨,中程度の根拠)
CQ106
ホスホジエステラーゼ5阻害薬は全身性強皮症に伴う皮膚潰瘍の治療に有効か?
推奨
全身性強皮症の潰瘍の治療において治癒をうながすことが期待される。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ107
抗リウマチ薬は関節リウマチに伴う皮膚潰瘍の治療に有効か?
推奨
リウマトイド血管炎に伴う皮膚潰瘍に対し,選択肢の1つとして提案する。
ただし,非血管炎性の潰瘍に対しては,潰瘍治癒を阻害することがあり休薬が必要となることがある。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ108
生物学的製剤は関節リウマチに伴う皮膚潰瘍の治療に有効か?
推奨
ステロイドやシクロホスファミドパルス療法など従来の血管炎に対する治療法に対して抵抗性の血管炎の症例に対し,TNFα阻害薬などの生物学的製剤は選択肢の1つとなり得る。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ109
外用薬・創傷被覆材は膠原病性皮膚潰瘍の治療に有効か?
推奨
外用薬・創傷被覆材は膠原病性皮膚潰瘍の治療に有効である。可能であれば銀含有製剤の使用を推奨する。潰瘍の状態と病態を把握して,適切な創傷被覆材を使用することが重要である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ110
外科的治療は膠原病性皮膚潰瘍の治療に有効か?
推奨
適切なwound bed preparationを行ったうえでの植皮術は有効である。必要に応じてバイパス術や血管内治療を組み合わせて血流を保つ必要があることもある。全身性強皮症にはバイパス術は無効である。関節リウマチと全身性強皮症には血管内治療,経皮的動脈形成術や大伏在静脈抜去術が有効な可能性がある。指潰瘍や足潰瘍には動脈周囲交感神経切除術が有効である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ111
陰圧閉鎖療法は膠原病性皮膚潰瘍の治療に有効か?
推奨
膠原病性皮膚潰瘍の難治例に対する治療の選択肢の1つとして提案する。
推奨の強さと根拠
2D(弱い推奨,とても弱い根拠)
CQ112
高気圧酸素治療は膠原病性皮膚潰瘍の治療に有効か?
推奨
高気圧酸素治療は膠原病性皮膚潰瘍の治療において,補助療法の1つとして推奨する。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
6章 慢性放射線潰瘍
CQ113
画像診断は有用か?
推奨
診断,評価において画像診断は有用である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ114
生検は必要か?
推奨
二次癌や再発との鑑別診断に有用である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ115
有効な保存的治療はあるか?
推奨
慢性放射線潰瘍の保存的治療には各種の軟膏や創傷被覆材,持続陰圧療法,成長因子製剤,高(気)圧酸素療法などが挙げられる。保存的治療が著効することは少ないが,創面の状況に合わせて適切に使用すれば有効な場合がある。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ116
デブリードマンは有効か?
推奨
デブリードマンは有効である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
CQ117
再建において皮弁術は植皮術と比較して有効か?
推奨
血行のよい皮弁での再建は,植皮術と比較し有効である。
推奨の強さと根拠
2C(弱い推奨,弱い根拠)
スクロールすることができます
第Ⅰ編 急性創傷診療ガイドライン
・1章 切創,裂創,擦過創,刺創,異物(汚染のない創)
・2章 挫滅創・汚染創
・3章 皮膚欠損創,剥脱創
・4章 切断創
・5章 動物咬傷
第Ⅱ編 感染創診療ガイドライン
・1章 感染創の基本事項
・2章 蜂窩織炎
・3章 壊死性軟部組織感染症
・4章 骨髄炎
・5章 Toxic Shock Syndrome(TSS)
・6章 陥入爪・巻き爪
第Ⅲ編 ケロイド・肥厚性瘢痕診療ガイドライン
・1章 ケロイド
・2章 肥厚性瘢痕
・3章 瘢痕拘縮
・4章 醜状瘢痕
第Ⅳ編 慢性創傷診療ガイドライン
・1章 胸骨骨髄炎・縦隔炎
・2章 静脈うっ滞性潰瘍
・3章 糖尿病性潰瘍
・4章 虚血性潰瘍
・5章 膠原病性潰瘍
・6章 慢性放射線潰瘍